奈良の小さなサロンで、美容師を始めて18年になります。
ヘナ専門店として長く続けてきた中で、よく聞かれることがあります。「ヘナって、本当にちゃんと染まるんですか」。
この問いへの答えは、「はい」でもあり、「ただし」でもあります。今回はその「ただし」の部分まで含めて、ヘナで続けるということがどういうことなのかを書いておきたいと思います。
頻繁に染めたい。でも、頭皮が傷んでいく。
白髪が気になり始めると、多くの方がヘアカラーを定期的に続けるようになります。月に一度、あるいはそれ以上の頻度で。
アルカリカラーは、アルカリ剤と酸化剤で髪の内部に染料を浸透させます。この反応が同時に、頭皮への刺激になります。施術中のしみる感覚、施術後の乾燥や違和感。それをずっと抱えながら、でも白髪は気になるから続けてきた、という方が多いのが現実です。
美容師側も同じ問題を抱えています。薬剤を毎日扱い続ける手は荒れやすく、ひどい場合は皮膚炎になります。Graciasがヘナ専門店に転換したきっかけの一つも、スタッフの手荒れでした。
ヘナは、強い作用を持たない素材です。
ヘナは植物の葉を乾燥させた粉です。アルカリ剤も酸化剤も使わず、髪の表面に色素が結合する仕組みで色が入ります。
だから、長時間置いても傷まない。
アルカリカラーは置きすぎるとダメージが深刻になりますが、ヘナにその心配はありません。サロンでは施術中に、お客様が読書をしたり、眠ったりしながら過ごしています。忙しい方でも、他のことをしながらできる。高頻度で続けても負荷が小さい。それは、強い作用を持たないヘナだからできることです。
縮毛矯正をやめた方の話
印象に残っているお客様がいます。長年、縮毛矯正を続けてきた方でした。
ヘナに切り替えてしばらくしてから、縮毛矯正をやめてみることにしたいとおっしゃいました。ヘナを重ねることで、髪に落ち着きが出てきた感覚があったそうです。今は、ヘナとカットだけで、まとまっています。「勧めてくれてよかった」という言葉をいただきました。
続けることで、以前は必要だと思っていたものが変わることがある。そういうことが、実際に起きています。
サロンの空気が変わりました。
ヘナ専門店にしてから、サロンのにおいが変わりました。以前は来店した瞬間からケミカルな薬剤のにおいがしていました。今は「においが気にならない」と言っていただくことがあります。変えてみて初めて気づいたことでした。
スタッフの手荒れも、薬剤を毎日扱わなくなってから繰り返さなくなりました。サロンを続けていくうえで、小さくない変化です。

石油資源に依存しない選択
一般的なヘアカラーには石油由来の成分が含まれ、薬剤・容器を含めると美容業界の環境負荷は相当なものになります。ヘナは植物粉です。石油資源への依存度が、根本的に違います。
「エコだからヘナを選んでください」と言いたいわけではありません。ただ、白髪染めを続けるという選択が、自分の頭皮と髪だけでなく、もう少し広い何かとも関係している。そのことを、知っておいてほしいと思います。
自由度を手放す代わりに得るもの
正直に書きます。ヘナは色味の幅が狭く、明るくすることもできません。白髪量や髪質によって見え方が変わります。これはデメリットです。
ただ、その代わりに得られるものがあります。高頻度で続けても負荷が小さいこと。美容師とお客様が、同じ素材を通じて長い関係を築けること。
持続可能な白髪染めという選択。それがヘナを勧め続けてきた、18年間の実感です。
始める前に、知っておいてほしいこと
Graciasでは、ヘナを始めるときにインフォームドコンセントを大切にしています。メリットだけでなく、デメリットも。続けるコツも。移行期に何が起きるかも。パッチテストの必要性も。これらをお伝えしてから、スタートしていただきたいと考えています。
次の記事では、アルカリカラーからヘナへの移行期に実際に何が起きるか、どう乗り越えるかを具体的に書きます。