モロッコで見てきたこと。砂漠のヘナと、そこで生きる人々

モロッコのヘナ産地に辿り着くまでに、日本から3日かかります。

関西空港を発ち、ドバイで乗り継ぎ、カサブランカで長い待機時間を過ごし、エラシディアの小さな空港に降り立つ。そこから車で3時間。ヘナ畑が広がる産地に着くのは、出発から3日目のことです。

何度訪れても、最初に感じるのは同じことです。ここに来ないと、わからないことがある、と。


気温45度の砂漠で、ヘナは育っています。

産地の気温は、日中45度に達することがあります。強い風が吹き続け、体の水分が一気に奪われていく感覚があります。現地の人々が40度を超える気温でも長袖を着ている理由が、しばらくいると実感でわかるようになります。

この過酷な環境が、ヘナの生育には最適です。高温で低湿度、強い日差し。ヘナ葉の乾燥にも、同じ条件が必要です。

産地に暮らすアマジーグの人々は、太陽の性質をよく理解していました。午前の太陽、午後の太陽、夕方の太陽。それぞれの時間帯を使い分けて、ヘナ葉を乾燥させています。午後に吹く強風は、葉の乾燥と選別に欠かせない自然のエネルギーです。機械では再現しにくい、この土地ならではの工程です。


2年以上、雨が降っていませんでした。

訪れた時期、産地では2年以上にわたって雨が降っていませんでした。

アフリカ全体で記録的な干ばつが続いており、砂漠地帯では井戸が枯れ、水源の確保が切実な課題になっています。地下を掘れば水は出るものの、塩分が多く農業には使えない水源が多い。

そういった状況の中で、点滴灌漑という方法が使われています。点滴のように少量の水を直接根元へ送り続けることで、最小限の水資源で農地を維持する技術です。モロッコの土壌にはリン成分が多く含まれており、点滴灌漑との組み合わせで、砂漠だった土地に緑が戻ってきています。

ヘナを栽培するということが、砂漠の緑化と重なっています。


パンデミックが、産地を変えました。

2017年に最初にモロッコを訪れ、2022年に再訪したとき、産地の状況は変わっていました。

モロッコのサハラ砂漠周辺は、観光業が主な収入源でした。それがパンデミックによって止まり、多くの人が仕事を失いました。食品の価格も高騰し、都市部とは全く異なる厳しさが続いていました。

この地域に必要なのは、水源と雇用だと感じました。ヘナの栽培が雇用を生み、砂漠の緑化につながる。ビジネスとしての仕入れが、その地域の産業の一部を支えることになる。それを意識しながら、産地との関係を続けています。


アルガンオイルについて、現地で知ったことがあります。

アルガンの産地はアガディールを起点に広がっています。そこへ向かう道中、窓の外の山々がすべてアルガンの木でした。

アルガンは希少な植物だと、日本では紹介されることが多い。でも現地では、見渡す限りアルガンの木が続いていました。かつては薪として使われ激減したそうですが、今は利用価値が認められ広く植林されています。

木にヤギが登り、実を食べる。よく知られた光景にも出会いました。モロッコでは木にぶら下がる実を収穫することは許されていません。地面に落ちた実のみが対象です。ヤギが吐き出した種も収穫できますが、臭いが染み着く問題がある。美容室で使う素材としては選べません。

品質を決めるのはフィルタリングの加減です。かけるほど衛生的になる。かけすぎると、良い成分まで失われる。この微妙なさじ加減が、オイルの質を決定的に決めます。最終工程では窒素ガスを充填して酸化を防ぐ。酸化したオイルが届いてしまえば、それは肌を傷めるものになってしまうからです。

産地を自分の目で確認してから使う素材と、そうでない素材は、使い方への関わり方が変わります。Saharaシリーズの素材を選んだのは、そういう判断の積み重ねでした。


このシリーズが、ホームケアとしてどう使えるか。

産地の背景を確認した素材で作ったシリーズが、お客様の日常にどうつながるか。それは次のジャーナルで整理しています。


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